百物語は終わらない
「ちょっと見てくる」

僕は弟にそう言って、音のした方へと向かった。音がしたのはリビングの方。ゆっくりと僕はリビングの扉を開ける。

扉を開けて、後悔したよ。あんな怖い思いをするのはきっと、あれが最後だと思うな。

あれだけおかしな現象が起きていたから、幽霊がいるのもおかしくないかもしれない。でも、僕の家にいる幽霊は一人じゃなかった。

部屋には、数人の幽霊がいた。どれもが痛々しい傷がある。僕は意識を失ってしまった。

あのホテルがあった場所は、大昔に魔女狩りで捕らえられた人たちを拷問していた場所だったらしい。あの人たちは、僕たちに助けを求めていたんじゃないかと思うんだ。


出海がろうそくの炎を消す。

「怖いね……」

私たちは言葉を失った。ごくりと唾を飲み込み、グラスに入れられた麦茶を飲み干す。

「じゃあ次は私が!」

冬子がそう言い、話し始めた。


これは、いとこの知り合いが体験した話。

その人ーーーTさんは予備校の先生をしていて、その日はたまたま遅くまで残って作業をしていた。

時刻は丑三つ時。幽霊が出ると言われている時間。
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