百物語は終わらない
そして、友達がトイレに行った時に姉さんは窓にたくさん子どもや大人のサイズの手形があることに気づいた。その瞬間、耳鳴りがして姉さんはすぐに家を飛び出したんだ。

家の前で窓の方を見た時、姉さんはゾッとしたらしい。何人もの人が姉さんをじっと見ていたんだってさ。


勇気がろうそくの炎を消す。ゾクリと私の体に寒気が走り、みんなが口々に「怖い!」と言った。

「怖いと思ってもらえてよかったなんて思ってないからな!!」

そう言いながらも勇気はどこか嬉しそう。

「次は、林さんだろ」

勇気がそう言うと、紫ちゃんは「そうね」と微笑む。そして、口を開いた。


これはある大学で起こった話よ。

その大学に通うEさんは、ある日民俗学の研究をしている教授のもとを訪ねた時、壁にある絵がかけられていることに気づいたの。

その絵は、黒い袴を履いた男性と白無垢を着た女性の絵。結婚式の絵ね。Eさんは「この絵は一体なんですか?」と教授に訊いたの。

「これは、ムカサリ絵馬と言って山形県の村山地方で行われている民俗風習の一つだよ。結婚をする前に事故や病気で亡くなった子供の親が、絵や写真で架空の人物との婚儀の様子を描くことで故人の幸せなどを願うものだ」
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