Before dawn〜夜明け前〜
いぶきの目にいつもの強い光が宿った。
迷いも、戸惑いもない、拓人を魅了して離さないあのいぶきの強い目だ。


「やっと、俺の子供だって認めたな?
その子のおかげで、いぶきと家庭を持ちたいと強く思えた。

この先、戸籍に名前は載らなくても俺は忘れないから。
闇を照らす光になってくれた。
だから名前は、『光(ひかる)』だな。
一条光」


「一条光…
そっか、子供は、“一条”…

ねぇ、拓人の子供産むのは、私だけの特権?」


「いぶきが俺のプロポーズを承諾して、“一条いぶき”になるなら、いぶきだけ。

でも、仕事もあるんだ。
好きなんだろ?弁護士の仕事。ムリして子供を産む事を考えなくていい」

「私、赤ちゃんがいたって知って、本当は嬉しかった。大好きな人の子供だもの。
私にとっても闇を照らす光になってくれた。

だから、私、一条いぶきになる。

拓人の子供を産んで、私が子供の頃に親にして欲しかった全てをしてあげる。
もちろん、弁護士の仕事も頑張るよ。
大丈夫。最強のおじいちゃん達が手伝ってくれるから」


「いぶき。

もう、二度と闇は来ない。
明るい光の下、毎日を幸せにすごそう」

そう言って拓人は、スーツのポケットからあの千切れたネックレスの残骸を取り出した。

「あ、それ…」

「鎖が千切れただけだ。リングは無事だ。
もう指にはめるから、鎖はいらないよ」

そう言って、拓人はリングをいぶきの指にはめる。それから、自分の首からもネックレスを外し、リングをいぶきに渡した。

「俺の。いぶきがはめて?」

いぶきは、拓人の手のひらから震える指先でリングをつまむ。
そして、拓人の指にはめた。

「やっと。
やっと手に入れた…いぶき」

拓人は、いぶきにキスの雨を降らせた。
キスを受けながらいぶきは腕を伸ばし、拓人の体を抱きしめた。

「傷、痛まないか?」

「痛みより、嬉しさが勝ってる」

やっと闇を抜け出せた。
いぶきを闇へと引きずり込む、重い運命の枷はもう外した。

もう、迷わない。
互いの愛情を信じて未来を生きるから。
この手はもう決して離さないから…










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