俺様課長のお気に入り
とりあえず、出勤の準備をしないとって動き出したのは、どれぐらい経った頃だろう。
熱も下がったし、これ以上迷惑をかけられないから会社に向かった。


「陽菜ちゃん、もう大丈夫?」

「はい。熱も下がったので、大丈夫です。夏美先輩、昨日はすみませんでした」

念のためマスクはしているものの、体はもうほとんどだるくない。

「よかった。体調が悪い時はお互い様だからね。無理はしないでね」

「はい。……夏美先輩」

「ん?なに?」

「今日、ランチミーティングをお願いしてもいいですか?」

そう言うと、夏美先輩はニヤリとした。
な、なんだろう?

「もちろん、いいわよ」




こうしてまた、先日も訪れた近くの定食屋さんに来ていた。

「岩崎さん絡みのことね?」

「なんでわかるんですか?」

「だって、昨日、陽菜ちゃんが風邪で休んでることを、岩崎さんに伝えたのは私だもの」

「な、なんでですか?」

「決まってるでしょ?陽菜ちゃんは岩崎さんのお気に入りだもの」

「お気に入り!?」

「そうよ。岩崎さん、陽菜ちゃんの元に駆けつけて、助けてくれたんじゃない?」

「そうですけど……」

「これまでの陽菜ちゃんの話を聞いてるとわかるもの。岩崎さんが陽菜ちゃんをかわいがっていることがね。それに、陽菜ちゃんも、彼に来られて嫌じゃなかったんじゃない?」

そう言われて考えてみた。



「驚きました。でも、嫌じゃなかっです。すごく助かったし……」

「でしょ?それで陽菜ちゃんが話したかったことは何?」

「えぇっと……岩崎さんが来てくれて、本当に助かったんです。それに、ちょっと心細かったので、ホッとしました。
岩崎さんがケイ君の散歩も行ってくれたんですけど、その間に私寝ちゃってて。次に目が覚めた時には、岩崎さんに抱きしめられて寝てたんです。
それに……それに……帰り際にキスされました」

「きゃー!岩崎さん、思った通り積極的ね。陽菜ちゃん、それもやっぱり嫌じゃなかったの?」

「……驚いたし、恥ずかしかったけど、嫌だとは思いませんでした」

「それが陽菜ちゃんの答えなんじゃないのかなあ?」

「えっ?どういうことですか?」

「陽菜ちゃんは、岩崎さんのすることが嫌じゃない。これまで、陽菜ちゃんにここまで近づいた男の人っていた?」

「いいえ。いなかったです。私の近くには、いつも兄がいたので」

「そっかあ。だから戸惑っているかもしれないけど、自分の素直な気持ちに気付けるのも、すぐだと思うよ」

「素直な気持ち……ですか?」


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