俺様課長のお気に入り
「要君、15分経ったよ。おうい」

軽く要君の体を揺すった。

「んーもうかあ」

そう言って立ち上がると、思いっきり伸びをした。
足元にいたケイ君も。

「もう。重かったんだからね」

「俺は陽菜の足が柔らかくて、気持ちよかったぞ」

「なっ……」

「陽菜はかわいいやつだな」

顔を真っ赤にした私の頭を、ぽんぽんと優しく触る。
それからもう一度座り直して、冷めきってしまったコーヒーを、ゆっくりと飲んでいた。



「じゃあ、そろそろ帰るよ」

玄関に向かう要君の後を、ケイ君とついていく。

「ケイ、また遊ぼうな」

要君は来た時と同じように、ケイ君の頭をわしゃわしゃと撫で回した。

「陽菜もおいで」

まただな。
そう思って身構えていたら、要君は不意に私の手を掴んで抱き寄せた。
驚いて固まっていると、

「陽菜、ありがとう」

と優しく囁いて、またキスをした。

「陽菜、固まりすぎ」

「だ、だって、今またキスした……なんで?」

「なんでだと思う?」

真っ赤になって固まる私に、要君は妖艶な笑みを向けてきた。

「じゃあな。しっかり戸締りしろよ。おやすみ」

答えをくれないまま、要君は帰っていった。



ーなんでだと思う?ー



その言葉が、いつまでも私の頭の中に響いていた。




日曜日。
要君は友達と会う用があるとかで、一緒にお出かけはしなかった。
少しさみしいけれど、仕方がない。


家にいると、昨夜のことばかり考えてしまう。
要君はまた、私にキスをした。

自惚れかもしれないけど、キスをするってことは嫌われてはいないはず。
というより、なんらかの好意は持たれてると思う。
でもそれは、思わずペットにしちゃうようなキスかもしれない……

ああ、わからない。

とりあえず、どんな意味にしろ好かれてるには間違いなさそうだ。
そう考えが落ち着いたところで、ケイ君にせっつかれて散歩に行くことにした。

10月に入り、肌寒さを感じるようになってきたけど、散歩は欠かせないもんね。
そうだ!ついでにトリミングもしてもらってこよう。
ベンチに座ってお店に電話をすると、30分後に空きがあったので、予約を入れた。

「ケイ君、散歩の最後にトリミングに行くよ。綺麗にしてもらおうね」

「ワン!」

トリミングが大好きなケイ君だから、喜んでくれるはず。

ケイ君尽くしのまったりした日曜日は、あっという間に過ぎていった。


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