蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
〝結局、乗り遅れました。だからたぶん同じ電車に乗ってます〟

 混み合う車両の中で自分の位置を確保すると、私は彼にメッセージを送り、スマートフォンをバッグに収めた。

 わざわざメッセージを送る必要はなかったのに、なぜ送ったのだろう?
 揺られながら理由を列挙する。

 ひとつ目。あれだけ別出勤を主張しておきながら一緒の電車に乗っていることが決まり悪いから。

ふたつ目。同じ電車になっちゃったけど、見かけても無視してねという牽制を込めて。

三つ目。これはほんの少しだけど、一緒の電車に乗っていることが新鮮で、ちょっとうれしいから。


 つり革につかまり、再び昨夜の出来事がどこまで幻覚でどこからが現実なのかを考え始める。
 昨夜のこと全体が幻覚だったわけではないことは、キッチンに自分のひとり酒盛りの痕跡が──カップ酒の空瓶と口の開いたイカゲソの袋があったことでわかっている。

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