蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
 悩ましいのは、夢の中の出来事だと思っていたお漬物が冷蔵庫に入っていたことだ。彼に酒盛りの現場を押さえられたあの場面が現実だとしたら、そのあとのキスも──。


「…………」


 心の中でギャーと悲鳴を上げたけれど、声に出すのは我慢した。蓮司さんはどうして私にキスしたの?

 それに答えるようなタイミングで、バッグの中でスマートフォンが振動した。取り出してみると、画面には〝鷹取蓮司〟と表示されている。彼の返事は当然ながら、キスにはまったく関係ないことだった。


〝社員証をテーブルの上に忘れていったぞ。俺が持ってきてる〟


 うそ? つり革に掴まったまま、肩にかけたバッグを覗き込んだ。やっぱりない。


〝ごめんなさい! 事業統括部まで受け取りにいきます〟

〝通用口を通過できるならね〟


 たしかに、社員証がないと通用口のドアを通れない。慌てたせいで寝ぼけたことを言ってしまった。ICカードリーダーに顔パスという機能はないのだ。
 それにしても、いつも思うけれどほかに言い方はないものだろうか? 会話にもメールにも嫌味ったらしい性格が滲み出ている。


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