蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
それからというもの、私は毎日バスタブを磨き、汚れたタオルを取り替え、巨大なベッドのシーツと格闘した。それを三カ月続けたあとはセントラル厨房の洗い場で皿洗いをし、それからリネン室でクリーニング作業に勤しんだ。
手は荒れるし腰は痛めるし、仕事はなかなかハードだ。でも私はそれらの仕事が結構気に入っていた。なにしろ同僚たちが最高なのだ。嫉妬と策略が絡み合う社交界と比べ、労働者たちの清々しさと逞しさといったらない。社会を支えているのは彼らの力なのだと思う。
とはいえ、両親にはそうした裏方修行をしていることは一切言わなかった。辞めてしまいなさいと言われるのが嫌だったからだ。
また、私が白川花壇の娘であることも周囲に言わなかった。知っているのは同い年で実習仲間の楠田真帆だけだ。リネン室実習が入れ替わりだった彼女とはとても気が合った。
仲間に恵まれ仕事は面白かったけれど、鬱陶しいことに鷹取蓮司は、その存在をようやく忘れた頃に職場に現れては嫌味を投下していく。
「あらぁ乃梨子ちゃん、もう目をつけられたんね?」
のんびりした上州弁の主は社内一の情報通、リネン室の小舟さんだ。もう六十を過ぎたおばちゃんだけど私よりガンガン動くし、重いシーツの束も軽々と投げる。
「鷹取部長は陰で秘密警察って呼ばれてるらしいよ。人事もホテル事業も全般見てるの。目をつけられた人は必ず退職に追い込まれるんだって」
ちょうどリネン室に立ち寄っていた真帆が隣から情報を追加する。真帆はなぜか私より早く実習から解放され、今は鷹取蓮司が率いるホテル事業統括部にいる。
手は荒れるし腰は痛めるし、仕事はなかなかハードだ。でも私はそれらの仕事が結構気に入っていた。なにしろ同僚たちが最高なのだ。嫉妬と策略が絡み合う社交界と比べ、労働者たちの清々しさと逞しさといったらない。社会を支えているのは彼らの力なのだと思う。
とはいえ、両親にはそうした裏方修行をしていることは一切言わなかった。辞めてしまいなさいと言われるのが嫌だったからだ。
また、私が白川花壇の娘であることも周囲に言わなかった。知っているのは同い年で実習仲間の楠田真帆だけだ。リネン室実習が入れ替わりだった彼女とはとても気が合った。
仲間に恵まれ仕事は面白かったけれど、鬱陶しいことに鷹取蓮司は、その存在をようやく忘れた頃に職場に現れては嫌味を投下していく。
「あらぁ乃梨子ちゃん、もう目をつけられたんね?」
のんびりした上州弁の主は社内一の情報通、リネン室の小舟さんだ。もう六十を過ぎたおばちゃんだけど私よりガンガン動くし、重いシーツの束も軽々と投げる。
「鷹取部長は陰で秘密警察って呼ばれてるらしいよ。人事もホテル事業も全般見てるの。目をつけられた人は必ず退職に追い込まれるんだって」
ちょうどリネン室に立ち寄っていた真帆が隣から情報を追加する。真帆はなぜか私より早く実習から解放され、今は鷹取蓮司が率いるホテル事業統括部にいる。