蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「背中にも目がついとるって噂だがね」

「うわぁ……」


 拒絶反応で私は思わず顔をしかめた。そうなれば白川花壇に戻れるのだけど、まだ辞めたくない。少なくともあの男にクビにされるのは癪に障る。


「でもあんないい男になら逮捕されるのも悪くねぇべ?」

「そうだよねー」


 真帆と小舟さんは橘派ではなく鷹取派なのだ。


 こうして同僚やパートのおばちゃんたちと親交を深めながら、半年かけて裏方修行を終えると、表の仕事に変わった。といってもやはり身体が資本、バンケットでの給仕係だ。分厚い絨毯の上、ヒールの靴で何時間も続く立ち仕事に、私の脚は毎日パンパンにむくんだ。


「こけるなよ」


 立食パーティーでカクテルを乗せた銀盆をカタカタいわせながら運んでいると、耳元に低い声が落とされた。会場内をチェックしながら去っていく長身のスーツの背中を睨みつける。面接試験で私がこけたことを当てこすっているのだ。

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