MIYU~シングルマザー二十歳,もう一度恋します~
玄関先で,(ほう)けている場合じゃなかった。
腕時計を確かめると,もう七時前だ。父ももうとっくに帰って来ていて,母と春奈と三人で首を長くして,美優の帰りを今か今かと待っているのだろうか。
「ただいまー!(おそ)くなってゴメン!」
「遅い!」と怒られるのを覚悟で,思いきって玄関ドアを開けると,待っていたのは仏頂面……ではなく,なぜかニンマリ顔で玄関に立っている父。美優は拍子(ひょうし)抜けというより,呆気(あっけ)に取られた。
「……お父さん,何ニヤニヤしてんの?」
「お帰り,美優。――今日,例の婚活相手の男と会ってきたんだろ?」
「えっ?……う,うん。そうだけど」
父が発した「会ってきた」という言葉から微妙なニュアンスを感じ取った美優は,思わずたじろぐ。彼とキスしたことを思い出しただけで,体が熱くなった。
(……ナニ?もしかしてお父さん,おかしな想像してる?)
(たと)えば,知り合って間もない彼と()()したとか("アレ"の意味は,読み手の想像にお(まか)せするけれど)。
「今日が春奈の誕生日じゃなかったら,泊まってきてもよかったのに。残念だな」
……やっぱり。父は自分の娘を,そんなにふしだらな(言い方(ふる)っ!)娘だと思っているらしい。冗談(じょうだん)でも笑えない!
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