MIYU~シングルマザー二十歳,もう一度恋します~
しかも,父は困惑顔をして,機嫌を(そこ)ねたままの愛妻と娘の顔を交互(こうご)に見ていた。
「どうしたの?」と,美優が目だけで(うった)えかけると,父は小声で美優に訊き,首を捻ってみせた。説明を求めているらしい。
「……母さん,どうかしたのか?何を怒ってるんだ?」
「ああ。あたしが作家の浜田裕一さんとお付き合い始めたこと,お父さんは知ってるのに話してくれない,って怒ってんの。お父さんから,お母さんに話してくれてると思ったのに」
「あ……」
しまった,と顔をしかめる父に,美優はさらに追い打ちをかけた。
「お母さん,彼のファンでしょ?だから,自分だけ仲間(はず)れにされたような感覚なんじゃないかなあ」
「"仲間外れ"って,ガキか。ただでさえ,ウチには春奈がいて手がかかるってのに」
「悪かったわね!――別に私,拗ねてなんかいないわよ」
下手(へた)をすれば夫婦ゲンカ,という両親の険悪なムードに美優は(きも)を冷やしたけれど。
(おれ)の言い方が悪かった。すまん」
大体は,どちらかが謝るとケンカは回避(かいひ)される。今回もそのパターンだった。
「お父さん,春奈の子()り,お疲れさま。肩こってない?もんであげようか?」
「おっ,悪いな。サンキュ」
美優は娘と遊んでくれていた父を(ねぎら)い,肩をもみ始めた。
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