MIYU~シングルマザー二十歳,もう一度恋します~
「うわー,ガチガチだねえ。いつもご苦労さまです。――ところで春奈は?」
彼女は父の肩をもみながら,我が子の様子を訊いてみる。
「春奈なら,遊び疲れて寝ちまったよ。あの調子だと,朝まで起きそうにないな」
(なるほど。だからお父さん,こっちに戻ってこられたワケね)
美優はそれで納得できた。春奈は父親がいない分,祖父である秀雄にベッタリなのだ。春奈が眠ってでもいない限り,父が離れた途端に母娘の寝室が(さわ)がしくなっていたに違いない。
「そっか。じゃ,あたしもそろそろ部屋に行くよ。春奈の(そば)についててあげたいし」
美優は父の肩もみをやめ,読んでいた本をビニール袋に入れると,ソファーから立ち上がった。
「お父さん,お母さん,ちょっと早いけどおやすみなさい。――あ,後でシャワーは()びに来るかもしんないけど」
「ああ,おやすみ」
「美優,おやすみなさい。――やっぱり,浜田先生のサイン,お願いしてもいい?」
「…………分かった。いいよ」
(お母さんの意地っぱり。やっぱりサイン欲しいんじゃん)
美優は呆れながらも,母に頷いてみせた。彼のサインが欲しいなら,最初から素直に(たの)めばいいのに!
書店のビニール袋を抱え,彼女は寝室に入った。
袋はベッドの枕元(まくらもと)にそっと置いて,トートバッグからスマホを取り出す。
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