MIYU~シングルマザー二十歳,もう一度恋します~
「まず,日曜日の行き先なんですけど。娘のリクエストで,動物園に決まりました。それと,昨日買って頂いたクマさん,すごく喜んでくれましたよ」
(あれ?報告が一つ増えてる気がするけど,まあいっか☆)
話しながら気づいて,美優は自分で首を傾げる。でも,気にしないことにした。
『動物園だね。うん,オッケー。じゃあ,待ち合わせの時間とかはまた改めて相談しよっか。――で,もう一つの報告って?』
美優からの電話がよほど嬉しかったのか,裕一の声は何だか(はず)んで聞こえる。
それなら,もっと彼を喜ばせたい。彼の嬉しそうな声を,もっと聴いていたい。彼女はそう思って,二つめの報告をするために口を開いた。
「あたし今日,裕一さんが出した本,四冊とも買ったんです。で,一冊めの『雪花(ゆきばな)』はもう,一気に三分の一くらいまで読んじゃいました」
『えっ?早速(さっそく)買って読んでくれたんだ?ありがとう!……で,どうだった?』
彼は嬉しそうに,感想を求めてくる。作家にとって,読者からの感想は一番の(はげ)みになるし,また今後の作品の(かて)にもなるのだ。聴きたがるのも当然だろう。
「はい。とっても切ないお話で,裕一さんの人柄が文章にも滲み出てて,作品の世界観にぐっと引き込まれました」
『そっかそっか。気に入ってもらえてよかった』
「ええ。まだ続きもあるし,他の作品もまだ読んでないので,その感想はまた今度。……ところで裕一さん。一つお願いがあるんですけど」
< 56 / 85 >

この作品をシェア

pagetop