MIYU~シングルマザー二十歳,もう一度恋します~
「じゃ,美優が持ってきた本にもサインするよ。その方が,君のお母さんも喜ぶと思うからさ」
「わあ,ありがとうございます!」
この人,なんてサービス精神旺盛なんだろう!サインを書くことを,負担に思わないなんて。作家という職業の人は,みんなこうなんだろうか?
――車は,上野(うえの)動物園に着いた。
春奈は着く直前に目を覚まして,車を降りると急にテンションが上がった。
「シャンシャン,シャンシャン♪」
「シャンシャン?――ああ,パンダの香々(シャンシャン)のこと?よしっ,パンダちゃん見に行こう!」
「わーい♪」
裕一が,はしゃぐ春奈の手を取って歩いて行く。美優には二人の姿が,もう既に立派な父娘(おやこ)のように見えた。
(これなら,いつ話しても大丈夫かも)
初対面でこれだけ打ち()けているなら,父親になることを話しても,春奈はすんなり受け入れてくれそうだ。
お目当てのパンダを始め,色々な動物を見て回った後,春奈がグッズショップの前で立ち止まった。
「ゆーいちおじさん,パンダちゃん!」
彼女が指さした(たな)を見ると,そこには可愛いパンダのぬいぐるみが並んでいる。裕一は春奈の言わんとすることを,こう解釈した。
「……コレは,『買って!』っていう意味でいいのかな?ママさん?」
彼は一応,美優に確かめる。けれど,困った顔をしていないところを見ると,彼自身は買ってあげるつもりでいるのかもしれない。
「あ……,ハイ。春奈っ,裕一おじさんにワガママ言っちゃダメだよっ!」
とはいえ,ここは母親として,我が子を甘やかすわけにはいかないので,美優は春奈をたしなめた。
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