過ぎた時間は違っても
泣き顔さえ愛しい。何十年経っても忘れないくらい、目に焼き付けていたい。

亡くなった人のために残された人が悲しむのは亡くなった人がその先生きていく上で経験するはずだった悲しみを残された人が貰ってしまうから。

幼い頃、唯織の両親に訊いた言葉だ。だから、もし唯織が亡くなって後を追いたくなるくらいの悲しみに見回れたのならそれは唯織が生きていくにはそれくらい辛い思いをしなくちゃいけなかったという事になる。唯織の感情を少しでも知る事が出来るなら俺はどんなに辛くても耐えられる。本当に唯織を愛しているから。

「どっちがだよ・・・、バカ・・・」

「・・・でも、けじめはちゃんとつけなよ」

あぁ、あの子の事か。良いよ。今戻って会えたらはっきりと言うよ。
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