優しい彼と愛なき結婚
2人は親しげな雰囲気でタクシーを呼び止めた。
こっそり後を付けようか、一瞬だけ迷った。
でもこそこそしても仕方ながないと、一歩踏み出す。
「あの、」
大胆な行動に出ることができた理由は、きっと、私が綾人さんのことを愛していないからだ。私の性格ならば本来はショックを受けて2人に声を掛けることはできないはずで。
勇気を出して声をかけた。
「綾人さん、来ちゃいました」
「優里?」
綾人さんが僅かに顔をしかめたことを見過ごさず、平然と笑う。
「話しをしたかったのですが、今夜は無理そうですね」
決めた。
綾人さんが頷いて私のために時間を作ってくれるのであれば、結婚のことを前向きに考えよう。