優しい彼と愛なき結婚

ふらふらと家に帰ると、歩夢がキッチンに立っていた。


「おかえり。大丈夫?」

「お粥?ありがとね」


朝に歩夢が干してくれた洗濯物もベランダから取り込まれて、リビングに綺麗に畳まれて置かれていた。


「ゆっくりしてて」

「うん」


もう1週間程、大悟さんが帰らないことを不信に感じているだろうが、歩夢もおばあちゃんもそのことには触れなかった。


私も大悟さんのアドバイス通り、歩夢のバイトのことには触れないと決めた。


「お粥、できたよ」

「うん…」

「食べなきゃ駄目だよ」


少し前までは借金のために一生懸命働くと意気込んでいたにも関わらず、今は無気力で本末転倒だ。


「ばあちゃんが漬物持ってきてくれるって言うから、待ってて。それじゃぁ悪いけど、バイトだから」


「うん。ありがとう。いってらっしゃい」


テーブルに座り、湯気の立つお粥を眺める。
美味しそうだとは思うが、レンゲを持つ手が止まる。


「いいから、食えよ」


慌ただしく出て行く歩夢に念を押される。
そうだよね。時間ない中、作ってもらったんだから残すなんて申し訳ないよね。


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