優しい彼と愛なき結婚
なんとか一口、胃に収めると入れ替わりにおばあちゃんがやってきた。
「おばあちゃん……」
「いい香りだね。私のぬか漬けも食べな」
おばあちゃん特製のぬか漬けは大好物だ。
「大分、痩せたね」
「そうだね…食欲なくて」
向かいのテーブルに座った祖母はお茶を淹れてくれた。
「優里のせいではないよ」
「うん?」
きゅうりを一口食べる。
味の濃いものを口にしていなかったからか、いつもよりしょっぱく感じた。
「こうなったのは、全てばあちゃんのせいだ」
「なにが?ん?」
「私が病気にならなければ、優里が借金を作ることも歩夢が忙しくすることもなかっただろう」
「なにそれ。そんなことないよ」
目の前のおばあちゃんが小さく見えて、励ましの言葉を探す。なによりおばあちゃんに悲しい顔をさせている原因は、孫がこんなに弱々しい姿を見せてしまっているからだろう。
ごめんね。
「…大悟くんのことは、昔からよく知っている」
「そうだね。私よりおばあちゃんの方が先に会ってるよね」
「おまえが綾人くんと結婚しようとしていることを知って、私がお願いしたんだよ」
「なにを?」
湯飲みをもつ祖母の手が震えていた。