優しい彼と愛なき結婚
綾人さんから結婚の話をされたことは、おばあちゃんには話した。その後にすぐやっぱり大悟さんと結婚すると報告しなければならなくなり、言わなければ良かったと後悔したけれど。
「私が、大悟くんに言ったんだ」
大悟さんに?
「優里を綾人くんの嫁にするくらいなら、治療などせずあのまま死んでしまえば良かったと。私が、死ねば良かったと」
「そんな……」
「大切な優里は大悟くんに託したいとーー言ってしまった」
「え?」
まさか、それで大悟さんはーー
私に大悟さんとの結婚話を持ちかけたの?
「全ては老人の戯言を、優しい大悟が聞き入れて、家族想いの優里が承諾したんだ」
ーー俺と結婚する?
雨宿りのために寄ったあのカフェでの提案は、突拍子のない思いつきの発言だと疑わなかった。
普通なら自分の人生がかかった結婚をあんな風に軽はずみに提案できるはずがない。大悟さんは最初から私の事情を知っていて、おばあちゃんの気持ちを理解して、私に"結婚"しようと言ってくれたの?
彼自身の人生を犠牲にしてまで。