優しい彼と愛なき結婚
あの日からレイの自宅にお世話になっている。
彼女と結婚する前も家賃が払えなくなると、よくここに避難していたし、今更遠慮をする仲でもない。小言は言われるが、それももう聞き飽きた。
綾人が優里に近付いたシーンをたまたまレイが見掛けて、俺に連絡をくれた。綾人が愛用しているうちが経営するホテルは何件かあったが、優里の職場から一番近いところを調査すればすぐに判明した。
経営者の息子が宿泊予約リストを盗み見ることなど、造作もないことだ。
水無瀬にも連絡をして、綾人がろくでもない男だと分かってもらうために連れて行ったが、余計なことをしただろうか。
「調べたが、桜野さんは3日休暇をとっただけで出社はしているようだ。あれから1週間経つし、互いに冷静に話せるのでは?」
「んー、冷静に離婚について話せばいいの?」
高そうな絨毯の上に寝転がり、高い天井を仰ぐ。
「あの家での暮らし、すげぇ好きだったんだけどな」
「そう思うのなら、早く帰ればいいだろう。甘っ」
マグカップに口つけたレイは顔をしかめた。
今の俺にはこれくらいの甘さが必要なんだよ。