優しい彼と愛なき結婚

大悟さんは私の過ちを許してくれるという。
本当に優しくて、心の広い人だと思う。

そんな人をホテルでは本気で怒らせてしまった。いたたまれない気持ちと、迎えに来てくれた嬉しさが同時に込み上げてくる。


「本当にごめんなさい」


「もういいよ」


「…この1週間、大悟さんに謝りたくて、会いたくて、感情がぐちゃぐちゃでした」


「飯も食えないほどに?」


「はい…私にとって大悟さんはもう、なくてはならない存在です。自分の馬鹿な行動のせいであなたを失わなくて良かった…」


このまま大悟さんが戻らない恐怖と共に過ごした夜は長く、気が狂いそうだった。
もう二度と、あんな思いはしたくない。


「そう簡単に手放してやんないから、安心しろ」


無邪気な笑顔で宣言してくれた大悟さんは大きな伸びをした。


「なんか疲れたな」


「はい」


「明日も仕事休んで、ゆっくりする?」


「それはダメです」


東京営業所のみんなに迷惑をかけてしまっている。早く挽回しないと。


「真面目だな。1日休んでも2日でも、同じじゃん」


「同じではないです」


いつもの空気だ。
やっと心安らぐ日常が戻ってきた。

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