優しい彼と愛なき結婚
どうして綾人さんが私と結婚したいか、分かった気がした。嫌な予感ほど当たるものだし。
私の心を見透かしたように、雨が降ってきた。
ここ数日、天候が不安定ではあるけれど今、降らなくても。
すぐに止む。
傘を買っている間に止んでしまうような雨なんだ。
「おまえ、立ちながら寝れるのか?」
背後から声がした。
私ではないだろうと思ったけれど反射的に振り向く。
まずドクロ柄のTシャツが目に入り、背の高い人物を見上げて首を振る。
「ね、寝てなんて…」
「じゃぁ傘くらい指せよ」
ほら、と渡された長傘を受け取る。
29年間、顔を合わせることがなかったのに、ここ数日で2回も会うことになるとは…。