優しい彼と愛なき結婚
雫のついた赤髪を見つめ、ハッとする。
か、傘!
開いた傘を男に傾ける。
「俺はいいよ」
「でも…」
「そこのカフェで雨宿りすっから。じゃっ」
初めて会った時はもっとピリピリした空気を纏っていた気がしたのに。今はその派手な赤髪さえ彼によく似合っていると錯覚してまう。
「あの、一緒に雨宿りしてもいいですか?」
カフェに向かって走り出そうとする男に問えば、
「俺の許可なんて必要ねぇだろ。好きにしろよ」
そう言ってくれた。
月島家。
私にとって天の上の存在で、彼らとの時間はいつも息苦しかったのに。
月島 大悟(つきしま だいご)。
彼の纏う空気はふわふわとして軽く、どうしてこうも自由なのだろう。