優しい彼と愛なき結婚

金曜日の夜。

大悟さんが美山駅にある花林というお店でアルバイトをしていると聞いていたので、歩夢を連れて訪れた。


歩夢は既に何回か来たことがあるという。


「お、いらっしゃい」


予告なしに来店したため、少し驚いた大悟さんは後ろを振り返った。


「大将!うちの奥さんが来ました!」

「うっせぇ、店で大きな声を出すなや」

「サービスしてくださいね!」


大悟さんに背中を押されて、カウンター席に座る。大悟さんが大将と呼んだ男性は60歳くらいだろうか。職人の気難しい雰囲気をもつ方だった。

花林はお蕎麦屋さんだ。

店内は私たちの他にサラリーマンが2組、蕎麦を啜っていた。



「来てくれてありがとう。ざる蕎麦でいい?」

「はい」

「俺は天ぷら付きでお願いします」

「かしこまりました」


テキパキと動く大悟さんは生き生きとしていて時折、お客さんと談笑していた。

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