優しい彼と愛なき結婚
「俺がこんな性格だからアルバイトはすぐに辞めていく。大悟は根性あって助かるよ」
蕎麦を盛りつけながら、大将は言った。
「あなたはいい夫を見つけたな」
「はい。私にはもったいない人です」
大将と交わした言葉はそれだけだったけれど、天ぷらの海老をサービスしてくれた。さらに帰り際、揚げたての天ぷらをおばあちゃんへの手土産として持たせてくれた。
蕎麦も美味しく、何度もお礼を言ってお店を出た。
「大悟さんって本当に凄いよね」
「そうだね」
少し肌寒い夜だったけれど、お腹と心が満たされて温かかった。
「俺、知らないでやばいバイトに行きそうになったことがあって。大悟さんに助けてもらったんだ。絡んできた2人の男を一蹴する大悟さん、カッコ良かった」
あの写真のことだろうか。
すっきりとした顔で語る歩夢からはやましいことはないと伝わってきた。問い詰めなくて、良かった…。
「危ないバイトは辞めてよね」
「分かってるよ。もう二度と行かない」
大悟さんと別れる日が来たら、歩夢は哀しむだろうな。私たち家族にとって、大悟さんはなくてはならない大切な存在になっている。