優しい彼と愛なき結婚
向かい側の席に座り、バニラシェイクとミルクティーを注文した。
「私、桜野 優里(さくらの ゆうり)と申します」
「大悟(だいご)です」
「先日は、ありがとうございました」
綾人さんを乗せたタクシーを見送った時、心を決めた。だから心からお礼の言葉を口にできた。
「なんで抵抗しなかった?」
ストローでシェイクをかき混ぜる大悟さんを見る。
「月島家には恩があるので…祖母の病気の治療費を負担してもらったり、私たちを本当の家族のように…」
「そうだとしても、拒む権利はあるぜ」
最もな意見を投下され、黙るしかない。
「あんたも見たろ?今頃あの女とよろしくやってるさ」
ああ、大悟さんに目撃されていたんだ。
またみっともないところを見せてしまったな。