優しい彼と愛なき結婚

「彼が私と結婚することをご両親に話されていて、どうしたらいいか、大悟さんとお会いしたあの日は迷ってました。彼との結婚を断ることも、彼自身を拒むことも、月島家のプライドを傷つけるような気がして答えを出せずにいました。…でも先程、私よりあの女性を優先した彼を見て、心は決まりました」


今まで一度も綾人さんの職場に来たことはなかった。大切な用であると彼も分かったはずだ。

それでも彼は彼女を優先した。
それが、答えだよね。


すうっと、息を吸う。


「私は結婚をお断りします」

「そう」

「ただ沢山のお金を借りてしまっていて、今すぐ返せるような額でなく、それが本当に申し訳なくて…」


突然、お金は湧いて出てこない。
私のお給料では後10年で返せるかすら危うい。まだ学生である弟にも、もちろん負担はかけさせたくない。


「そうか」


淡々とした返事だ。
月島家の次男である大悟さんにどうしてこんな話をしているのだろう。同情でも買いたいと思ってしまったのだろうか?おごましいにも程がある。

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