優しい彼と愛なき結婚
「抱きつくのは良くて、キスは駄目なのかよ」
不満気味な声がして、私の頭を撫でてくれた。大きな身体に包まれ、大悟さんに守られていると感じる。
「大悟さん」
「うん」
「羽奈ちゃんをギュッとしたみたいにしてください」
「はいはい」
要望通り、私の腰に手を回して少し苦しいくらいに抱き締めてくれた。
欲しかった温もりに、満たされる。
「毎晩、こうしてアンタを抱き締めて眠ってたよ」
「え…」
「だってアンタ一回寝たら起きないと一緒に住み始めた初日から分かったしさ。アンタが眠ったことを確認して、抱いて寝てた」
寝つきが良い方で、一度眠ったら目覚し時計に起こされるまで目は覚めない。深い眠りに落ちているようだ。
「抱き枕がないと眠れないのなら、そう言ってくれれば…」
「違ぇよ。ただ寝てる時じゃないと、アンタに触れられなかったから。俺もただヤりたいだけの男ってこと」
「……」
知らなかった。
寝相の悪い大悟さんは朝には布団を蹴飛ばして、たまにベッドから落ちることもあった。だから夜中に抱き締められていることを気付くことができなかった。
昨夜が初めてだと、思った。
「まぁ、アンタ以外の女には興味ないけど」
「大悟さん…」
夢のようで信じられない。
彼はいつから私を好きになってくれたのだろう。