優しい彼と愛なき結婚
芝生の上で寝転がった大悟さんは大きな伸びをして、私の太腿の上に移動してきた。いわゆる膝枕だ。
降り注ぐ太陽の光が眩しいのか、彼は目を閉じる。
「羽奈、いいこと言ってたよな。指輪してないのって」
「子供の洞察力も侮れませんね」
「そういやアイツ、たまに女の勘がどうのこうのって言ってるな」
この流れで、指輪を買いに行きませんか?とお誘いしても良いだろか。もちろん高価なものでなくていいから、大悟さんに贈られたい。でもこういうことって女性からおねだりするものでないよね?
「手、貸して」
芝生の上に置いていた手をとられ、太陽にかざす。
「優里の指って細いし、爪の形も綺麗だよな」
「いえ全然、お手入れとかもサボっていて」
奈緒さんのすべすべの手と比べてしまうと随分と見劣りするんだよね。センスの良いネイルが奈緒さんの上品さを際立てる。
「これ、似合うかな」
そう言って大悟さんはポケットから取り出したものを私に見せた。しかし太陽の光に反射してよく見えず、目を細める。
「気に入らなくても返品は不可なんで」
外側がシルバー、内側がゴールドのそれはキラキラと輝いて、やっばり私には眩しかった。
「おばあちゃんにサイズ聞いて、婚姻届出したその日に買ってきた。ちなみに俺のもあるんだよね」
2つのリングを掲げた大悟さんは起き上がり、その一方を私の薬指にはめてくれた。