優しい彼と愛なき結婚
最近は東京営業所に本社の営業部から男性が増員された。優秀な彼の活躍によりほとんどみんな定時に帰れるようになった。
大悟さんのアルバイトもいつも通りの時間に戻り、一緒に夕食をとれるようになった。
食後にソファーに並んでテレビを見ることも日課になっている。
「やっぱ、コイツが犯人だろ」
始まったばかりのドラマを見ながら難しい顔をし
た大悟さんの推理を聞く。
「そうですか?お兄さんは犯人ではないと思いますよ」
大悟さんの存在、お母様の言葉。
少し前までは借金を返さなければと焦っていったが、今は同じくらい家族との時間の大切さを実感している。
「イケメンに騙されるなよ」
「確かにイケメンですけど…」
CMやドラマに引っ張りだこのイケメン俳優。世間では騒がれているが、大悟さんに綾人さん。月島家のレベルの高さに、目が見慣れてしまっているのか何も思わなくなった。
「ああ、知ってる。俺の方がいいよな」
「はい…」
タイミングよくCMになり、大悟さんの顔が迫る。
目を閉じて感じる唇への熱に酔いしれると、テレビの音が消えた。
「え?」
「ベッド行こ」
「待って。まだ、ドラマのとちゅ…」
抱き上げられ、私の抗議は再び熱い唇によって塞がれた。