優しい彼と愛なき結婚
翌日。
欠伸を噛みしめながら駅の改札をくぐり、会社に向かった。
結局、日付が変わっても離してもらえなかった。
子供のように目を擦りながら朝食を食べていた彼は可愛くて、大きな欠伸をしながら眠そうにアルバイトに向かった。
今朝はお弁当を作れなかったけど、大悟さんのせいですからね?
「え…」
和んでいた心が急に寒くなる。
「おはよう、優里」
朝から爽やかな笑顔と、乱れのない黒髪。スーツを着込み、彼の周りだけ爽やかな風が吹いているようだ。
「綾人さん…」
「少し話せない?」
「仕事なの」
私の前に立つ綾人さんは明らかに通行人の迷惑になっている。