優しい彼と愛なき結婚

大丈夫。
大悟さんに話せばきっと解決する。


「そうか。分かった。今からこの契約書にサインをもらってくるとするよ」


綾人さんが身を翻して私に背を向けたと同時に、彼の手に握られていた紙が消えた。


「随分と物騒な話だね」

「副社長!?」


綾人さんが反応するより先に私が反応してしまった。


そこにはうちの副社長が立っていて、その手に契約書を握っていた。


「…君は何者」


綾人さんが契約書を奪い返す。


「赤羽 玲司(あかばね れいじ)と申します」

「あかばね…あの、赤羽電機のか?」

「知っててくれたんだ、ありがとう」

「経営者の中で君が会社を立て直した話を知らない者はいないだろう」


話には聞いていたけれど、やっぱり副社長は凄い人なんだ…って感心している場合じゃないよね。おかしなことに副社長を巻き込んでしまった。

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