優しい彼と愛なき結婚
「ねぇ、俺のこと話してないの?」
目元の涙を拭いながら、副社長は砕けた口調で問うてきた。
「えっと、副社長のことは…」
「話してない。直接、会わそうと思ってたから」
私の言葉に上乗せされた大悟さんの台詞に首を傾げる。
「優里。こいつは"レイ"。俺のフリースクール時代からの親友」
「宜しくね」
「……」
大悟さんは副社長を指さした。
人に指を向けてはダメ…って、え、?
「副社長が大悟さんの親友?」
混乱する頭。
大悟さんの話によく出てくる"レイ"が目の前の人物であるとは、理解に苦しむ。
赤羽 玲司(あかばね れいじ)だから、レイってわけ?
「副社長はご存知だったのですか?いつからです?」
「黙秘しろ」
運ばれてきたビールをまた煽り、大悟さんは副社長に指図した。
「黙秘とは…」
「赤羽電機に"桜野 優里"という者が新卒の採用試験に来たら、必ず合格させろ。それが、大悟の頼みだったから。最初から知ってるよ」
「え…」
思わず大悟さんを凝視すると、決まりが悪そうに私を見ていた。