優しい彼と愛なき結婚
月島家からの帰り道、手を差し出されて躊躇いなくそれに応える。
「明日にでも婚姻届を出してくるよ」
「それじゃぁ私も一緒に…」
「ううん。ひとりで大丈夫」
柔らかい口調で断られた。
普通のカップルなら婚姻届を一緒に提出することが当たり前だけれど、私たちの関係はいびつだ。
「アンタにはこれを持ってて欲しい」
空いている方の手で白い封筒を受け取る。
「離婚届。いつかのために」
「…ありがとうございます」
いつか、来るのかな。
愛されていなくても今は大悟さんの隣りが心地よい。彼を困らせるようなことは言えないけれど、私は少しずつ大悟さんに惹かれていくーーそんな予想ができて、寂しくなった。