優しい彼と愛なき結婚
完璧な両親と、従順だが腹の底が見えない兄。
俺にとって月島家は重く息苦しい場所に過ぎなかった。
それは今でも変わらない。
だからかな。あの子のことも綾人から、月島家から、守りたいと思った。俺が、守ってやるって。おごましいかもしれないけれど、その想いは変わらない。
「始まりはきっかけに過ぎない。これからどうするかは2人次第だろう」
乱れのない黒髪に長い睫毛と強い目力。一見、気難しそうに見えて柔軟な思考の持ち主で、俺は親友に何度も助けられてきた。
そうだよな。
これからどうなっていくかは、俺の振る舞い方次第だよな。優里に少しでも幸せな時間を過ごしてもらいたい。
「ありがと」
「……」
「ところで今日はレイの奢りでいいよな?結婚祝いってことで…ほら、給料日前だし」
「…そんなんで本当に結婚できるのか」
怪訝そうに言われ、大袈裟にこくりと頷く。
「うん、だって。今さっき、婚姻届出してきたし」
相手の反応は溜息だったけれど、何も言わなくてもきっと奢ってくれたであろうことは知っている。そういう奴だから。
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