優しい彼と愛なき結婚

朝食を食べ、食器の後片付けを終えたところで玄関のチャイムが鳴った。

濡れた手をそのままに張り切って歩夢が玄関まで走る。


「お!アンタが歩夢くんか!」

「はい!大悟さんですよね!」

「今日から歩夢は俺の弟だ!本当の兄弟だと思って接するからな」

「ぜひ!」


珍しく歩夢がハイテンションになっていた。人見知りな性格だから心配していたのだが、大悟さんの距離感の近い接し方が正解だったようで笑顔だった。


「あ、ばあちゃん。久しぶり!体調どう?」


私に軽く会釈すると、大悟はおばあちゃんの座るソファーの前で跪いた。


「おかげさまで、生きてるさ」

「そりゃぁ生きててもらわないと、困るわ」


今日の大悟さんはいつものようなラフな格好ではなく、スーツを着込んでいる。引越しの日だから動きやすい方が適しているというのに、気を遣ってくれたようだ。

本当はもっと早く私が時間を作って、家族と大悟さんを会わせるべきだったけれど。残業も多く、今更ながら心の準備もできず、後回しにしてしまっていた。

2人と笑いながら話す大悟さんを見て取り越し苦労だったことを知った。良かった…。

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