優しい彼と愛なき結婚
「なんとなく子供の頃から、両親は同じ部屋で眠るものだと思っていて…幸せの象徴とも言うのですかね。たまに喧嘩した両親が別々に眠っていると、家の空気が重くて…だから、私も結婚したら一緒に眠りたいと思っていました」
幼い頃の記憶。
「アンタはそれを俺に求めるの?」
淡々とした言い方だった。
いつも優しく接してくれている大悟さんの目は笑っていない。
「それは今後、アンタが本当に好きな奴と結婚した時にとっておけばいい」
急にカラカラになった喉をコーヒーで潤してから、言葉を選びながら伝える。
「私はこの先、大悟さんとお別れしても他の誰かと再婚するつもりはないです」
私なんかが幸せになっちゃいけない。
「どうしてそう決めつける?」
「私は大悟さんの人生を奪い、借金を返したからって今までのことが全てなかったことになるとは思いません。みんなを騙している私には幸せになる資格はないのです」
それに。
言えないけれど、大悟さんより素敵な男性が現れるとは考えにくいから。