優しい彼と愛なき結婚

20時過ぎ、質問に来る生徒がいなくなったタイミングでフリースクールを後にした。

園長と戻ってきた羽奈は俺とは目を合わせることなく、無視を決め込んでいた。明日になったら機嫌が直っているといいが…。


いずれ優里との結婚生活に終わりがあるだろうけれど、その後再婚はしないだろう。

最初で最後の結婚生活だから今を楽しみたいと思う。

結婚生活をできるだけ充実させようとする意味では優里も同じだろう。お昼に食べたお弁当も健康に気を遣ってくれたと分かるバランスの良い美味しいものだった。仕事との両立は大変だろうに。



レイから来ていたメールに返信をして、電車に乗り込む。


窓に映る自分はシャンパンレッドの短髪に、大きめのTシャツ。穴の空いたパンツ。疲れた顔のサラリーマンとは異なる服装に抱く感情は優越感でも劣等感でもなく、なにも思わなかった。


学生時代は人と同じように生きることに固執し、一歩先に行く兄の背中を執拗に追いかけていたがもう昔の話だ。

変われたきっかけは、フリースクールとレイとの出逢いだった。

今は自分らしくあれれば、それでいい。

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