優しい彼と愛なき結婚
男との間に割って入ろうかとも思ったが、とりあえず車内では傍観を決め込む。
「歩夢のとこは姉ちゃんとばあちゃんしかいないもんな。できるだけ苦労かけたくないよな」
肩に手を置いて同情のような言葉を紡いだ男の顔には笑みが浮かんでいた。明らかに友達や仲間っていう感じではないな。
俺もこんな格好をしているから不良にはよく絡まれるが、歩夢は怯えているように見える。
最寄り駅までは後2駅。しかし1つ手前で歩夢は強引に押される形でホームに下ろされた。
「なにするんだよ」
「少し遊んでかない?いい女を紹介するよ」
「帰る!」
再び車内に戻ろうとするものの歩夢は着ていたジャケットのフードを捕まれ、阻止された。
「いいから、いいから!」
「たまには息抜きしないとな!」
さすがの俺も電車から降り、フードを掴む手を振り払った。