優しい彼と愛なき結婚
「なにもないですよ。大悟さんと結婚して、幸せなことばかりです」
向き合うことが照れ臭くて、そのまま天井に向かって言う。
本当の愛ではない。
でも私たちの新しい夫婦のかたちもまた名前の違う愛なんだ。
「俺も幸せだよ」
「大悟さん…」
「両親のような仮面夫婦になりたくなくて、一生結婚はしないつもりだった。だからこうして隣りにアンタがいることが不思議でたまらない」
大悟さんの方を見ると、バッチリ目が合う。
「俺と結婚してくれてありがと」
言い終わると同時に、彼は欠伸をした。
「おやすみ」
大悟さんが目を閉じる。
「大悟さん」
「ん?」
一瞬、綾人さんの顔が浮かぶ。
「なんでもないです。おやすみなさい」
「んー、」
やっぱり言えなかった。