優しい彼と愛なき結婚

結局、ほとんど眠れないままキッチンに立った。目元のクマはメイクで隠せる程度であることがせめてもの救いだ。

4人分のお弁当を作っていると、大悟さんが起きる気配がした。

彼のアルバイトはシフト制で起きる時間も日によって違う。今日は早番のようだ。


「おはよ」

「おはようございます」


前髪を手で掻き上げながら登場した大悟さんはキッチンに入ってきて水を飲み、私の手元を覗いた。


「あーん」

「え?」

「卵焼き、ひとつちょうだい」


口を開けて待つ無防備な大悟さんに、卵焼きを食べさせる。


「ん、美味い」

「すぐに朝ご飯にしますね」


気恥ずかしくて話題を変えると、大悟さんはお湯を沸かしてくれた。


「パンとコーンスープでいい?俺が用意するよ」

「いいんですか?」

「よし、チーズものせよう」


冷蔵庫からとろけるチーズを取り出した大悟さんは私を見て、ふと笑った。


「昨夜、興奮して眠れなかった?」

「ち、違います!」


彼の整った顔が迫り、玉子ひとつ分くらいの距離しかない。


「寝不足でしょう」


私の目元を人差し指で叩いた大悟さんは真顔で言った。


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