聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~


騎士団は王城の敷地内にその本部を持っている。家を出ているものは、城とは別棟で建てられた宿舎に寝泊まりし、併設の食堂で料理を取る。医療の心得のあるものは城に数人いるので、騎士団員が怪我をしたときはたいがいここで面倒を見られるのだ。
実際、アーレスは現在、騎士団宿舎の空き部屋に寝かされていた。

あの討伐のとき、狼を引き寄せたところで、アーレスは剣を取り襲ってくる獣の一団に備えた。
野生の獣はアーレスの気迫にたじろいだのか彼を囲むようにして一定の間合いを取った。
そこへフレデリックとセイムスの矢が飛んでくる。セイムスの矢は一番大きな狼に命中したが、とどめを刺すべきのフレデリックの矢は脇にそれた。目の前に矢が落ちた狼は興奮し、アーレスの首を狙ってとびかかってくる。
それでも、すぐにやられるアーレスではない。目を狙って剣を振り下ろす。
鮮血がほとばしり、アーレスの刃は血に濡れた。

続いてとびかかってくる狼を相手にするが、応戦してくれるはずの弓兵が腑抜けているようではどうしようもない。

「フレデリック! ふざけるな。しっかりしろ!」

アーレスの怒号が響き渡り、群れの中の子狼が怯えたように後ずさる。しかし、矢が刺さっているボス狼が暴れていて、予想もつかない動きをする。

アーレスの一撃に傷を負った狼は、ふいに向きを変えフレデリックを狙った。

「う、うわっ」

驚いたフレデリックは尻もちをついてしまう。
セイムスが脇から矢を放つのと、アーレスが助けに入るために駆け出したのは同時だった。

狼は矢をよけ、アーレスが予想した軌道とは違った動きをした。とびかかってきた狼に、アーレスは腕をかまれ、肉の裂ける音を聞きながら、「逃げろ!」とフレデリックに向かった叫んだ。
その後、渾身の力で食らいついている顔を押さえつけ、地面に叩きつけて気絶させたが、とどめを刺したかどうかまでは覚えていない。その場で気を失ってしまったからだ。

そうして、気が付いたら騎士団宿舎まで運ばれていた。
腕の傷は深く、傷が塞がるまでは絶対安静。屋敷に帰すよりも医師の常駐する宿舎にいたほうがいいだろうという判断がなされたのだという。
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