聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「謝るくらいなら、鍛錬をなさい。アーレス様があなた方に言い続けてきたことは何ですか? 国を守るため、国民を守るために、力を身につけろと言っていたのではないの? こんなところで落ち込んでいる暇があるなら、一分一秒でも力をつけるために使いなさいっ」
「は、はいっ」
慌てて立ち上がったフレデリックは敬礼をして出ていく。
くすくすと笑い声を立てるのは副団長だ。
「なかなか手厳しいですね」
「……すみません」
さすがに怒りすぎたと、いずみも頬を赤くする。
「ですが、若者たちにはいい薬になったかもしれません。この王都は平和でした。それが、辺境を守ってくれていたアーレス殿をはじめとする精鋭によるものだという自覚が、欠けていたのかもしれませんね」
「……ルーファス様」
「熱が下がるまでは動かせません。しばらく、アーレス殿はこちらでお預かりすることになります。イズミ様は、どうなされますか?」
「夫の世話を人に任せる気はありません。私もここに住み込みます。部屋をひとつ準備していただいても構いませんか? それと、食堂に出入りする許可をいただきたいです」
ルーファスは、アーレスよりも年配の神経質そうな男だ。
食堂、というところで眉を寄せる。
「食堂ですか? 奥様の食事もこちらで用意させていただきますが」
「それはありがたいのですけど、アーレス様にしばらくは消化のいいメニューを召し上がっていただきたいんです。騎士団員の方々と同じメニューでは、体が受け付けないかもしれませんし。もしよければ、私に作らせてもらえないでしょうか」