聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「で、何です? 厨房を借りたいんでしたっけ」
「厨房というか、人も借りたいんです。私はここの調理器具を使いこなせないので。ですが、アーレス様に、消化のいい料理を食べてほしいんです」
するとエイダはあからさまに不満そうな顔をした。
「でもこっちも忙しんですよ。何せ大人数の食事を出さなきゃいけないので。材料だって決まったものしか入ってきませんし。ひとり分だけ違うものを作れと言われても困ります」
エイダの眉間の皺がだんだん深くなっていく。
困ったなと思いつつ、ここは譲れない。
なぜなら食堂に貼られた【本日のメニュー】が豚肉のバターソテーで、とても消化がいいとは言えなかったからだ。
「もちろん、こちらが我儘を言っているのはわかっています。皆さんの料理を出すのが先で構いません。ひとり分の材料を取り分けさせてもらっていいですか」
後でアーレス用に使うつもりの食材や肉を取り分け、「どうぞ始めてください」と一度は身を引く。
怪訝そうな顔をしつつ、作業を始める彼らは口にこそ出さないが、いずみを厄介者とみていた。