聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~


こっそりの騎士団宿舎から抜け出したいずみは、すぐにセシリーを見つけることができた。
掃除係である彼女は、城の裏口の水場でモップを洗っていたのだ。

「セシリー!」

「まあ、イズミ様」

彼女はいずみを見て柔らかく微笑んだ。が、いずみの方は思わず笑顔がこわばってしまった。セシリーの顔に、点状出血の症状が見られたからだ。

「セシリー、どうしたの?」

「ああ、これですか。すみません。見苦しくて。……少し体調を崩していまして」

言われて動きをみていれば、どうにも精彩さに欠けている。これでは、仕事をするにも以前よりずっと時間がかかるだろう。

「どうしたの? 大丈夫?」

「例の病かもしれません。うつるようなものではないそうですけど、危険ですからイズミ様は離れていたほうがいいですわ」

「大丈夫よ。うつらないんでしょう?」

いずみは簡単にセシリーの脈を取ったりして彼女の様子を観察した。全身の倦怠感と点状出血が主な症状のようだが、果たして一体何の病気かといわれると、医者でもないいずみには分からない。

「お医者様には診てもらったの? 栄養もちゃんと取ってる?」

「倒れるほど体調が悪いわけでもありませんし、私の家では簡単には医者にかかれません。大丈夫です、食事もちゃんと取っていますから。それより、イズミ様はどうされたんですか?」

「私は、……アーレス様の怪我を確認に騎士団に来て……」

一瞬頭から吹っ飛んでいた〝アーレスの恋しい人〟を思い出して、表情が陰る。だけど、体調の悪いセシリーの気を病ませるようなことも言いたくない。
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