聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「今日は騎士団宿舎に泊まるんだけど、部屋に花が飾ってあって。……それを見たらセシリーに会いたくなったの」
「まあ、すごいですね。イズミ様。今日の騎士団宿舎の掃除当番は私だったんです。団長の奥様がお泊りになるということで、お花を飾らせていただいたんですわ」
「やっぱりセシリーだったの?」
「はい。喜んでいただけたなら嬉しいです。久しぶりにお会いましたが、イズミ様がお幸せそうでよかったです」
「え?」
今、いずみは傷心の真っ最中だ。予想もしないことを言われて、顔がこわばってしまう。
「そのドレスも、よくお似合いです。団長様は武骨な方とお伺いしていたので心配していましたが、イズミ様を尊重してくださる方なんですね」
「……そう、よね。そうだわ」
自分の体調が悪いのに、イズミを気遣ってくれるセシリーの優しさが、胸にしみ、心が落ち着いてくる。
そうしたら、悲しさでいっぱいで感情的になっていた心が、少しずつ冷静さを取り戻してきた。
(そうだわ。アーレス様はちゃんと私を大事にしてくれる。ミヤ様は、誰もが憧れる聖女だったんだもの。アーレス様にとってもそうでもおかしくはないわ。それに、亡くなった人に嫉妬するのも見苦しい。一番になれないのは、仕方ないじゃない。私は、役立たずの聖女だもん)
ようやくそう結論付けることができ、セシリーに感謝を込めて手を握る。
「ありがとう。あなたに会いたかったの。体大事にしていてね」
「イズミ様こそ」
「イズミ!」
セシリーとの別れ際、背中に声をかけられた。
振り向くとそこには、寝間着にガウンを羽織っただけのアーレスがいた。呼吸が浅いのか肩が上下している。
まだ熱が下がっていないのだ。