聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「あんたは不思議な聖女だな」
「不思議……ですか?」
「ああ、全然偉ぶるところが無くて、親しみやすい。その分威厳はないがな。だがまあ、話しやすい」
「褒められてるんですか? だったら、ありがとうございます……ですけど」
「褒めてるよ。あまりに神々しい聖女は、庶民には遠すぎてな。聖女に救ってほしい人間もたくさんいたが、会うことすら叶わない人間の方が多かった。その点、あんたは顔を見合わせても気楽な聖女だな。こうして欲しいってことも言いやすくていい」
感慨深げに言う料理長をまじまじと見つめ、不思議な気持ちになる。
まあ、ミヤ様列伝を聞いていると、彼女があまりにも手の届かない存在であることは納得がいく。
だけど自分のことを親しみがあっていいと言ってもらえるとは思わなかった。
気恥ずかしくなり、しばらくいずみは無言で皿を洗う。
そして、終わったとき、料理長が明日のデザートの仕込みとして林檎の砂糖煮を作っているのを見て、ふと気になった。
「……そういえば、あまりフルーツをそのまま出すことが無いのはなぜですか? 生野菜を使った料理も少ないですよね」
「あ? ああ、これはミヤ様がおっしゃったんだ。衛生のために、食材はできるだけ火を通したほうがいいとな。ミヤ様のおかげで食物の生産量は増えた。その分、保存期間が長くなってきたから、できるだけ火を通したものを出すようにしているんだ」
この世界は、日本のように衛生的ではない。だからその主張自体はいずみにも理解できる。
(……でも、果物も?)
そう簡単に悪くならないリンゴやオレンジといった果物類まで、同じように加工する必要があるだろうか。