聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「でも火を使うことによって失われる栄養もあるはずなんだけどな……」
そういえば、ミヤ様は味噌や醤油を作らせていたのに、うまい料理法は紹介していないようだった。
日記を見ていても、自分で料理をする記述などなかった。ダム建設やいろいろな知識を知っていたようだが、料理関係の知識は疎かったのだろうか。
「イズミ様、聞いてよー!」
そこへ、泣きはらした顔で食堂に戻ってきたのはエイダだ。
「エイダさん? どうしたの?」
「フレデリックってば信じられない。もうっ、もうっ、男なんて信じないー!!」
「エイダ、お前、あの男と何かあったのか?」
うわあああんと大きな声で泣きはらしたエイダと、心配で大声を上げる料理長のせいで収集のつかなくなった食堂に、たまたまアーレスが入ってくる。
「フレデリックがなんだって? 俺も聞かせてもらおうか。団長室へ来い」
予想外の大物の登場に、エイダは思わず涙を止めて、いずみに抱き着いたのだ。
「ううう。何で失恋話を団長さんに報告しなきゃならないのぉ」
エイダは途方に暮れている。たしかに気の毒だ。
「私が行って断ってきましょうか。アーレス様は女性には優しいから、エイダさんに悪くなるようなことはしないと思うけれど、男の人には言いにくいんでしょう?」
「イズミ様……」
エイダは目を潤ませていずみを見つめ、その後、意を決したように首を横に振った。
「いいえ! こうなったら団長様にフレデリックを叱ってもらった方がすっきりする! 話しますとも!」
「うん。……うん?」
果たしてフレデリックは無事でいられるのか。むしろそっちが心配になるいずみだった。