聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
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王国騎士団は、王都に訓練所を設けている。
そして今アーレスは、その訓練所の前で憂いていた。

目の前には、膝をつき、息を荒げた、まるで戦地を潜り抜けてきた後のような騎士たちがいる。

ちなみに戦争などには行っていない。
基礎体力向上を目的とした一時間の走り込みと、筋トレの後、アーレスは順番に手合わせをした。
その結果、死屍累々と訓練場に兵士が横たわる羽目になったのだ。

対するアーレスは十人切りをしてもまだ余力がある。

(誰が誰に負けるって?)

ここに自分を呼び戻した時のオスカー陛下の談を思い出し、問いただしたい気持ちになった。
たしかに全盛期に比べれば衰えたかもしれないが、こいつらに負けるとは思えない。
アーレスは半分ブチ切れたような状態で、練習用のなまくらな剣を振った。

「情けないぞ! それでも王国騎士団員か! まだまだかかってこい!」

「団長こそ。なんで倒れないんですか。それでも人間ですか!」

倒れている兵士たちから一斉に上がる非難の声。

(……ったく、口答えだけは一丁前なのだから困る)

「……仕方ないな、休憩!」

これ以上の強制は人がついてこないと感じたアーレスは、仕方なくこの場を収めた。
すると途端に沸き上がる歓声。アーレスの眉間には深々と皺が刻まれる。

(不愉快だ。訓練するぞと言ったときは不満に満ちた声を出していたくせに)
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