聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
野営地でのサバイバルな食事を思い出してうんうん頷いていると、後ろから騒がしい気配がした。

「団長ー!」

「なんだ、フレデリック」

やって来たのは、柔らかそうな癖のある金髪を揺らした、騎士団員だ。
男爵家の三男坊で、背負う家が無いのを苦にするどころか楽観的にとらえて人生楽しむタイプの男だ。
能力的にはこの中では有望なほうだが、いかんせんそのチャラさはいただけない。

「団長、結婚したんですよね。聖女と! どうなんですか、奥様は」

「どうとはなんだ」

「いっやー、それを俺に言わせちゃいます? きゃー、恥ずかしい」

「ええい、うるさい。女みたいな悲鳴を上げるな」

馴れ馴れしい態度にドン引きだ。
昨今の若い者は語尾にですますだけつけておけば問題ないと思っている輩が多すぎる。

「人の家庭事情に口を出すな」

「えー。気になりますよ。聖女でしょ、ミヤ様みたいなすっげー美人なのかな」

素直に、世の中の一般男子が考えそうな感想を言うこの男に若干呆れつつ、でもそんなものかと納得したりもする。

「……ミヤ様とは違う。だが、彼女は彼女なりのいいところがある。それをこれから一緒に探すんだ。それが結婚ってことなんじゃないのか」

「いいこと探しってことですか? はあー、深いな」

「お前、いくつだ。結婚していないのか?」

「二十六歳です。結婚の予定はあったんですけどね。ほら、俺、三男でしょう? 相手が直前になって、他の男爵家の嫡男に嫁げることになって、手のひらひっくり返されたんですよ。もう恋愛とかこりごりです」

「それは、……気の毒だな」

普段の軽さが嘘のようなヘビーな話だ。意外と苦労しているらしい。
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